劣等感は自己成長の種・アドラー心理学のアプローチ
劣等感は持ってもいい
私たちは「劣等感」と聞くと、ネガティブなイメージを持ちがちですが、アドラー心理学では劣等感を否定的に捉えません。アドラー心理学の劣等感は、「今の自分と理想の自分の間にあるギャップを感じた時に生まれる気持ち」。「今の自分は、理想の自分から見たら、まだ未熟だな」と思った時に湧いてくる感覚が、劣等感です。自分なりに描いている理想の私、それは人によって様々ですが、まだそこに行きついていない自分を感じた時、
よし、また前に進んでみよう
自分なりに理想に向かって、今からでも行動を起こしてみよう
という活力を生み出してくれるのが、アドラー心理学の「劣等感」です。
因みに、この「劣等感をなくそう、少しでも理想に近づこう」とする努力のことを「補償」と呼んでいます。
私の場合ですと、自分の理想は、「心がいつも柔らかで安定していると同時に明晰、常にその場に即した愛ある対応のできる人」という、とてもハードルが高い理想なので、当然ですが、しょっちゅう劣等感を感じています。でも、理想にとどいていないから、毎日瞑想し、心の栄養になる本を読み、善き友達と交流するという努力を続けることができています。自分を成長させる「補償」へ促してくれるのが「劣等感」というわけです。
この劣等感を自分の味方にし、うまく成長の糧にするにあたって、注意するべき点が2つありますので、下にご紹介します。
比べるのは今の自分と理想の自分だけ
一つ目は、比較するのは「今の自分」と「理想の自分」であって、そこに「ほかの人」は入ってこない、という点です。自分の視点が向いているのは「理想の自分」で、周りの人のパフォーマンスと比べることはしません。
もちろん自分より先に進んでいるように見える人、あるいは自分の理想を生きているように見える人から、具体的な行動のヒントを得ることはできるでしょう。でも、その人と比べて「自分には絶対無理」「自分にはあんな風になれない」といった自己卑下に陥ったり、努力をせずに「あいつより実力では自分が上なんだ」「自分の方が高学歴なんだ」といった自己肥大に走るのは本末転倒。自分の理想に向かう足取りが遅くなるだけです。前者のパターンを「劣等コンプレックス」、後者を「優越コンプレックス」と呼び、課題への取り組みを避けるために無意識に使われます。このテーマは別の記事にまとめようと思います。
周りばかり気にしていると、自分の理想を見失いがち。自分を人と比べていることに気づいたら(ここでマインドフルネスを使いましょう!)、自分に戻り、自分の理想を思い出しましょう。
どんな小さな進歩でも認めよう
自分の理想に向かうということは、自分が成長する、ということですね。人との競争ではないのです。そこに勝ち負けはありませんし、人からの評価を気にすることもありません。もし失敗したら、そこから学び、また立ち上がって歩き出せばいいだけ。また、どんなに小さな進歩、どんなに小さな努力であっても、それを肯定的に認めていくことがとても大切です。自分に対して勇気づけをつづけていくのです。
劣等感を感じたら、
自分はまだまだ理想と比べたら未熟だけど、努力している。
ほんの少しだけど、できることが増えてきた。
ほんの少しだけど、前より良くなった気がする。
まだ成果は感じられないけど、自分のペースで頑張っている。
こんな言葉を自分にかけながら、小さな進歩、小さな努力を喜び、結果ではなく努力の過程に注目して自分を労っていきましょう。
劣等感は、自分の成長の糧です。
自分の理想にフォーカスし、人と比べず、どんな小さな進歩でも認め、自分の努力を労うことで、劣等感をぜひ味方につけてください。