失敗の「ショックの波」を上手に乗り越える方法

小さなものから大きなものまで、人生に失敗はつきものですね。


私も先日、うっかりして社内のメールを社外の人をコピーに入れて配信してしまうという失敗をしてしまいました。急いで各方面に謝罪の連絡を入れたのですが、どんなに「失敗は学びのチャンスだ」とわかっていても、失敗体験は苦い味がするものです。

今回は、私自身の経験とマインドフルネス、セルフコンパッション、アドラー心理学の考え方を使いながら、そんな「苦い失敗体験」をできるだけ上手に乗り切る方法について書いてみたいと思います。

失敗の痛みは1波と2波、2つの波でやってきます。このうち2つ目の波が曲者なのですが、言い換えると、これを乗りこなせれば失敗の痛みを大きく減らすことができる、ということでもあります。詳しく説明していきますね。

第1波・純粋な「ショックウェーブ」

失敗したことに気づいた時点で感じるのが第一波です。

やっちゃった!

ヤバい!

どうしよう!


気づいた時に心が受ける、純粋なショックのようなものですね。第1波を受けた時、
心臓がバクバクしてきたり、手汗が出てきたり、呼吸が浅くなったりと、はっきりした身体感覚を伴います。

この衝撃はインパクトが強いのですが、しばらくゆっくり目に呼吸したり、目を閉じて心臓の鼓動を感じたりしながら待っていると、だんだんと和らいでいきます。びっくりした気持ち、慌てる気持ちに抗わずに、ショックを身体感覚で捉えます。身体感覚をなだめるように寄り添いながら、しばらくショックの波に洗われてみましょう。波は必ず引いていきますから、大丈夫です。

 

2波・丁寧な対応が必要な「自責の念と不安感」

第1波が引いた後に押し寄せるのが、自責の念と不安です。

なんて私は馬鹿なんだろう

どうしてこんなミスばかりするんだろう


…といった自分を責める思考や

こんな失敗をした私は人からどう見られるんだろう

どうやって弁解したらいいだろう


…といった、自分の所属感、地位や評判が脅かされる不安が押し寄せてきます。

私たちが「失敗の苦しみ」という時は、この第2波の衝撃ではないかと思います。更に、第1波が一回切りであるのに対して、第2波は何度も何度も押し寄せてくるので、苦しみをより強く感じてしまいます。失敗の痛みをできるだけ軽くし、失敗体験を前向きに捉えて学びに変えるには、第2波をどう乗り切るかが大切になってくる、ということですね。

次に、その第2波の乗り越え方についてお話します。

「自分はダメな奴だ」・強い自己否定への対応

「失敗した=人間失格」ではありません。失敗した自分はただ、「失敗」という経験をしているだけです。失敗をするとその失敗だけに強烈にフォーカスしてしまいがちですが、自分には他にできていることやポジティブな特性・能力があるのです。たった一つの経験・出来事だけで「自分はダメ」「自分は馬鹿だ」「事態は絶望的だ」と決めつけたくなるのは、失敗の痛みで心の視野が狭くなっているだけなのです。

失敗を通して自分を否定したくなる時こそ、すでにできていること、他の分野での成功事例を思い出してください。狭い視野で下した決めつけや誇張には、それがたとえ自分の心の中に響く大きな声であっても、耳を傾けないことが大切です。

「なんてことをしてしまったんだろう」・罪悪感への対応

起きてしまったことを「無し」にはできませんから、謝罪やリカバリー・対応策が必要です。できることをやっていくしかない、ということです。罪悪感を感じることで、謝罪やリカバリー対応へのモチベーションが上がるのであれば、罪悪感を使うことも悪くはありませんが、自分を責め続けたところで、建設的な問題解決にはつながりませんよね。

罪悪感で心がつぶれそうな時ほど、「罪悪感を持つ目的」を考えてみて下さい。何のための罪悪感なのでしょう?罪悪感で自分を痛めつけることが、償いになるでしょうか?本当の償いは、失敗で起きた不具合をできる範囲で修復し、同じ間違いを起こさないことではないでしょうか。罪悪感に沈んで自分の殻に閉じ困らず、「今ここでできる、建設的なこと」に意識とエネルギーを注いでみましょう。

「人はどんな目で私を見るんだろう」・人の目に対する不安への対応

失敗した私を人はどう見るだろう、という不安は、人間なら誰でも感じる不安です。人間は所属感を感じると安心する動物なので、その所属感が脅かされることに対して本能的な危機感を覚えるからです。ですので、不安を感じている自分を否定する必要はありません

同時に、自分が考えている


私のことを裏で馬鹿にしているに違いない

もう二度と信頼してもらえない

仕事ができない奴というレッテルを貼られた


…といったことは、「あくまでの自分の想像に過ぎず、事実ではない可能性が高い」ということに気づいてみましょう。

たとえ自分の家族、友達、同僚や上司に「私のこと、馬鹿だと思ってますよね?」「仕事ができない奴というレッテルを貼りましたよね?」と聞いてみたとしても、本当の答えが返ってくる保証はありません。相手が本音を言うとは限らないですからね。


つまり、「自分の想像の答え合わせはできない」のです。答え合わせの出来ない想像で自分を不安に追い立てる必要はありませんよね。「この不安は、自分の想像から生まれているのだ」と考えることができると、不安は消えていきます

どうしても人の意見、人の目が気になる場合は、失敗を繰り返さないためのアドバイスや助けをもらうなどして、失敗経験に前向きに取り組んでいる自分を理解してもらう努力をしても良いと思います。

失敗した自分に理解・共感・優しさを

そして最後に、とても大切なこと。

レベルの大小はあれ、失敗は誰にとっても苦い体験です。苦しみを感じている自分に必要なのは、自己否定・罪悪感・不安による苛みではなく、苦しみに対する理解と共感、そして自分自身に対する優しさです。失敗した時こそ、自分に最大限の優しさを示してあげてください。

自分の大切な友達が失敗に打ちひしがれている時、自分がその人にかけてあげたいと思う言葉、態度、表情で、自分自身に接してあげましょう。失敗を通して心の傷が生まれた場合は特に、自分への優しさが必要です。


失敗を体験した時の色々な心模様と対応方についてお伝えしてみました。少しでも読者の皆様のお役に立てれば幸いです。