マインドフルネスで嫉妬心を減らそう

嫉妬心には、治療と予防を

自分の子供、パートナーや持ち物に財産、あるいは仕事の業績に肩書。私たちの周りには「人と比較する」もので溢れています。周りと自分を比較すること、それが自分と他者、どちらにとっても建設的なモチベーションアップとなるのなら良いのですが、比べることで落ち込んだり、嫉妬を感じることが多いのではないでしょうか。落ち込むにしても妬むにしても、健康な心の状態ではありませんね。私個人的には、「落ち込む」という静かなエネルギーを感じるよりも、「妬む」とい攻撃的なエネルギーを感じる方がつらいので、嫉妬心に関しては、できるだけ早く気づき、対処するようにしています。

人間ですから、時に人をうらやむ気持ちが出てくることはあります。別に恥ずかしいことではありませんし、出てきた感情に蓋をしたり、目を背ける必要もありません。どんな感情でも、自分自身をさらに知るための材料ですから、しっかり手に取って、理解して、上手に対処してあげればいいのです。

嫉妬心に対して、私は2つの対処方法を使っています。一つ目は、嫉妬心が出てきた時にそれを消化する方法。病気に例えれば、すでに発症している状態から、できるだけ早く健康な状態に戻す「治療」のようなものです。もう一つは、嫉妬心が生まれにくい心を普段から育てる努力をする方法。一つ目が「治療」だとすると、こちらは「予防」になります。

嫉妬心が出てきたら…

嫉妬心が出てきたら、まずはその気持ちがあることを意識します。「あ、自分の中には今、嫉妬の気持ちがあるな」と心の中で言葉にしても良いですね。その時に「嫉妬心はいけない感情だ」とジャッジしないことが大切です。ただ、「嫉妬心がある」ことを事実として受け入れて、自分がその嫉妬心をどう感じているか、観察してみます。それは怒りでしょうか。悲しみでしょうか。強い感情?それとも弱いですか?身体はどう反応していますか?しばらく目を閉じて、胸に手を当てて、ゆったりと呼吸してみると、自分の気持ちがわかりやすくなります。この、自分の心の動きに「気づき、観察する」のが、マインドフルネスのスキルになります。

私の場合、目を閉じてしばらく呼吸に意識を向けていると、とても疲れていることに気づくことがあります。知らないうちに、とても頑張っていて、その頑張りが結果を出していないから悲しくて、自分にイライラし、それで余計、結果を出している人やうまくいっている人がうらやましく思えていることに気づいたりします。また、その時の「結果が出ない悲しみ」「努力が実を結ばない苦しさ」をあるがままに、しばらく感じ続けていると、そういった感情はだんだんと消えていくことも体験します。

つまり、受け入れてただ観察していくだけで、嫉妬心の中身がわかったり、嫉妬心そのものがスッと消える(あるいは弱まる)のですが、ここでもう一つ注意があります。自分の気持ちを観察し、寄り添っている時に、嫉妬心を煽るようなことを考えの連鎖が起こったら、それを止めることです。

嫉妬心を見つめている時に、「なんであんな奴が成功するんだ」「失敗すればいいのに」「私なんて、どう頑張ったってどうせダメ」といった、嫉妬心に油を注いだり、自分を卑下するような自分との独り言が始まることがあるのですが、これに気づいたら、意識的にストップをかけます。今は自分の感情を見ているのであって、「嫌なあいつ」や「ダメな自分」を評論する時間ではないのです。

燃えている火に薪をくべたり、空気を吹き込み続ければ火が絶えないのと同じで、嫉妬心に油を注ぎつづければ、心はいつまでも燃え続けます。嫉妬心を掻き立てる思考をカットして、心が自然に安らぎ、落ち着いていく環境を作ってあげましょう。穏やかに見つめていれば、嫉妬心はだんだんと消えていきます。

もしも、強烈な嫉妬が何度も出てくる場合は、一人の時間を作って自分の想いを紙に書きだしてみるもの良いですね。なぜこの人にこだわるのか、なぜこれほどまでに結果にしがみつくのか…自分と対話をすることで、嫉妬の原因が見えてくることがあります。

嫉妬心の予防策は…

嫉妬心の反対は、人の幸せを喜ぶ心です。仏教では「喜・Mudita」と呼んでいる心で、英語ではSympathetic Joy(共感する喜び)と訳されていますが、普段から、この「喜」の心を育てておくと、嫉妬心は生まれにくくなってきます。でも、自分が今まさに嫉妬している人の成功を喜ぶことは、とても難しいですね。ですから、普段のトレーニングは、ハードルを下げ、「何の抵抗もなく、その人の幸せを喜べる場面」を使います。例えば、あなたの大切なお友達が試験に合格した、大好きなおばさんが退院した、そういう喜ばしいことがあったら、自分の中の喜びをしっかりと感じ、その人にもその喜びを伝える。伝えることができない場合は、心の中で想うだけでも結構です。

特に喜ばしいことがなくても、喜べることはたくさんあります。公園を通りかかる時、子供たちが楽しそうに笑っている声を聴いたり、その姿を見たことはありませんか?そして何となく、心が温かくなったことは? そういう時にも「あの子供たちの幸せが、笑い声が、これからも続きますように」「あの子供たちに、これからも明るさがとどまりますように」と願うことができます。「喜」の心を養う「ネタ」は、ちょっと気を付ければどこにでも見つかるものです。

実際にやってみよう!

次に嫉妬心を感じたら、実際に「治療」をしてみてください。まずは嫉妬心に気づくことから、です。「嫉妬心が芽生えた」、そう気づくだけでも、嫉妬心が暴走して憎しみや恨みつらみに発展することはほとんどなくなります。そして、次に街を歩くとき、どれほどの笑顔・笑い声に気づくことができるか、チャレンジしてみてください。その一つ一つの笑顔に、「その笑顔が、これからも続きますように」と願えば、あなたの心は「喜」でいっぱいになり、だんだんと嫉妬心が芽生えにくい土壌になっていきますよ。