マインドフルネスを使った建設的で平和なコミュニケーションのコツ

子供や家族、会社の同僚や仲間、あるいは学校関連のお友達など、私たちは日々、誰かと対話しながら過ごしています。シンプルな立ち話から、人の悩み苦しみなどの深い話、簡単に結論が出せる話や、複雑でなかなか議論が終わらない話など、話の内容も様々ですね。

単に意見を交換するだけであれ、何か合意に至る必要がある場合であれ、相手の話を丁寧に聴き、言葉を選んで自分の意見を伝えることは、建設的なコミュニケーションの基本です。自分の話に心から耳を傾けてくれる相手、攻撃性なしに意見を交換できる相手には心を開きたくなりますし、そんな相手となら、前向きな議論をしたくなるものですからね。

ですが、実際のところは、思春期の子供やパートナーと喧嘩になったり、単なる感情的な意見のぶつけ合いになったりと、建設的な議論ができないことも多いものです。今回の記事では、マインドフルネス(今ここの現実に意識を向け、ありのままに認知すること)を使った、建設的で平和なコミュニケーションのポイントをお伝えします。

1.対話の際の心構え

対話を始める際には、まず以下の3点に注意を向けてみて下さい。

A. 今の自分の状態をチェックする

これから話を始めるにあたって、今の自分がどんな状態にあるのかチェックします。頭の中に様々な憶測や言葉が渦巻いていますか?今の気分、ムードはどんな感じですか?不安や怒りなど、特定の感情を感じていますか?自分の身体はどんな状態ですか?身体のどこかに違和感、不快感、緊張感はありますか?

自分が今どんな状態であっても大丈夫です。そこに良い悪いの判断を入れず、「あ、自分は今こんな感じになっているんだな」と、自分に対して共感しながら、ただ認知します。この「自分チェック」を行うだけで、感情が不安定な状態のまま対話に突入することを避けることができます。

B. 自分を緩める

大切な対話や難しい議論の前には、心と身体の緊張や不安定さを感じることが多いものです。そんな時は、自分を緩めてあげてください。

何度か深く長い呼吸をして、吐く息とともに心身の緊張が解けていくようなイメージを持ってもいいですし、実際に不快感を感じている身体の部分(喉元やお腹、心臓のあたりなど)に手を当て、なでたり擦ったりしてもいいです。大切なのは、これから対話する自分をできる限りリラックスさせてあげる、ということです。完全にリラックスすできなくても、感情のボルテージを下げるだけでも大丈夫です。

C. 心を広げ、対話の結果を信頼する

対話を前にして感情的になるのは、対話で生まれてくる結果が見えないから。ああ言われたらどうしよう、自分の意見は絶対に譲れない…そんな思考が自分を揺らしますよね。

ですが、対話の結果を予想することなど、誰にもできません。本当に、「話してみないとわからない」のです。ですので、「必ずしも自分の意見は通らないかも知れないけれど、良い落としどころが見つかるだろう」「完全に分かり合えないとしても、無駄な時間にはならないだろう」と考え、心に余裕と広がりを与えてみます。これからの対話で生まれてくる結果を信頼する、という感じです。この心の下準備ができていると、柔軟性を持ちながら話をすることができます。

2.マインドフルに聴いてみよう

A. 相手に意識を向ける

「相手に意識を向けるって、当たり前じゃないか!」と言われそうですが、人と話をする時、私たちの意識は「自分」に向いていることがとても多いのです。例えば、人の話を聴きながら「次に言う自分のセリフ」を準備していること、ありませんか?人の話を聴いているつもりで、実は自分の立場や言い分を守るための論理武装に一生懸命だったということは、きっとあなたにも経験があると思います。

こんな風に、人の話を聴く代わりに「自分の頭の中」に閉じこもってしまうと、リアルな相手が見えなくなります。話の内容がしっかりと頭に入ってこないだけではなく、相手が声のトーンや表情、態度などで伝えてくる、大切な情報を見落とすことにもなります

頭の中であれこれ考えるのは一旦止めて、目の前の相手にしっかりと意識を向けましょう。あなたの答えを考えるのは、話を聴いてからでも充分間に合います

B. 好奇心と「相手を理解したい」という意図を持つ

相手に意識が向いたら、「相手を理解したい、理解しよう」という想いを新たにしてみます。相手を打ち負かそうとか、言いくるめようという自分の欲は捨てて、「この人は一体どんな想いで、私に何を伝えようとしているのか」を知ることに集中します。この純粋な「相手を理解したい」という気持ちは、あなたの態度や表情に自然と表れてきますので、それを見た相手の心を更に開いてくれます。

聞いている間、相手に対する好奇心を持ち続けましょう。好奇心があれば、相手を無作法にさえぎるということは起こらなくなります。

3.マインドフルに話してみよう

A. 相手が伝えてくれたことを、自分の言葉で伝え返してみよう

相手の話を最後まで聞いたら、その内容をあなたの言葉でまとめ、相手に伝えてみてください。この時、自分の言葉ひとつひとつを自覚し、丁寧に話します。

  • xxさんは普段からxxと感じていて、今はxxと考えているんですね
  • xxさんとしては、xxが問題であって、xxして解決したいと思っているんですね

みたいな感じですね。

そして

  • 私の理解、合っていますか?
  • もし私の理解に間違いがあったり、聞き落したところがあったら教えてください

という風に、自分の理解の不足がないかも確認します。

これをすると、相手は「本当に聞いてもらっているんだ」「理解しようとしてくれているんだ」と感じてくれます。相手の心が開いていればいるほど、この後のやり取りが建設的になりますので、このフィードバックはとても大切です。

B. 自分の意見はあくまでも「意見」として伝える

自分が伝えようとする意見は、あくまでも「私見」です。これを「絶対的真理」として押し付けようとすると、相手は防御態勢に入り、心を閉ざしてしまいます。ですので、

  • 私としてはxxだと感じています
  • 私の意見ですが、xxするといいのではないかと思います
  • あくまでも提案なのですが、xxという解決方法もあるかと思います

というように、自分の意見は相手の意見と同じように議論の材料であることを伝えます。

C. 話を矮小化したり尾ひれをつけて大きくしない

ここで大切なのは、「自分にとっての真実をありのあまに話す」ということです。相手を怒らせないために話を矮小化したり、相手を説き伏せるために話を大きく、ドラマチックにしない、ということですね。相手を操作しようとしている自分に気づいたら、フラットに伝えることを思い出してください。

色々なステップをご紹介してきましたが、このいくつかを実践するだけでも、お互いの気持ちがスムーズに伝わりやすくなります。また、意見の違いがあったとしても、感情的にならず、互いの意見へのリスペクトを持ちながら話し合いを続ける素地ができてきます。

意見の食い違いを超えて合意を目指す必要がある場合は、お互いにとって「まあいいかな」「とりあえずこれでやってみようか」と言える仮の着地点を見つけてみると良いと思います。完璧を目指さず、「一旦こうしてみよう」が見つかれば良しとする、そんな気持ちで話をしてみて下さい。

我が家の場合、娘が16歳の時に門限を外したのですが、その際にも今日ご紹介したコミュニケーション方法を使い、感情的にならずに親子が納得できる落としどころを見つけることができました。

意見は「感情的にぶつけ合うもの」ではありません。今ここの自分、今ここの相手に丁寧に気づきながら、互いを思いやる気持ちを忘れずにいれば、建設的な対話は可能です。練習が必要ではありますが、是非チャレンジしてみて下さい。まずは簡単な会話のなかで、今日ご紹介したポイントを意識してくただくといいかと思います。