「既読スルー」にモヤモヤ・ビクビクしないための考え方

「既読スルー」に怯える必要はありません

自分が書いたLINEやその他のSNSメッセージ。「既読」になっているのに、反応がない。スタンプさえも来ない。そんな時、みなさんはどんな気持ちになりますか?

帰る時間になっても帰ってこない子供に送った緊急メッセージであれば、当然ながら心配になりますよね。私も娘を持つ親として、そんな時「既読スルー」のままで時間が経過したら、さすがに心配になります。おそらく電話をかけるでしょう。このように、「既読スルー」を真摯に受け止めるべき場面は当然あります。ですが、今日お話するのは、そういった緊急性のないメッセージの「既読スルー問題」についてです。

友達やグループにメッセージを送った後、既読になったにも関わらず返信がない時、もやもやしたり不安になる方がとても多いようです。「私、何か悪いことを言ってしまったんだろうか」「怒らせてしまったのだろうか」「嫌われてのでは…」「まさか、仲間外れ?」といった自分責めや疎外感に苦しんで、悶々としてしまうのです。今日は、そんな時の対処法をマインドフルネスとアドラー心理学の両方からご紹介したいと思います。どちらも私の経験を基にしています。

言うまでもありませんが、相手に対して悪意があり、相手の気持ち・立場を配慮しない発信は「既読スルー」されて然るべきものですので、この記事での「発信」はそういった類のものではないものを前提にしています。

マインドフルネス的対処法・感情の認知~理性的対応

マインドフルネスを使った対応は、ざわざわした心に気づくことから始め、感情を整えてから理性を使います。モヤモヤ・ビクビクが出てきた時の心の切り替えに使ってみてください。

1.「既読スルー」に心ざわついている自分に気づく

まず最初に、「既読」という文字を見た瞬間にざわざわしてくる自分に気づきましょう。いつも「既読スルー」に敏感に反応している方は、画面を見た途端に心が揺れるのを感じるでしょう。いったん携帯電話を伏せる、目を閉じるなどして「既読」メッセージの影響力を抑えてから、自分の心の状態を観察してみます。どんな気分ですか?今の心の状態を、不安、怒り、イライラ、焦りなど、しっかりと判別してみましょう。その時、そういった感情が身体感覚としてどのように表れているか確認してみてください。心拍数が上がっている、呼吸が速く浅くなっている、手汗がでる、胃の辺りが重くなるなど、「身体による感情表現」を捉えます。

 

2.身体感覚に寄り添いながら、感情の波が引くのを待つ

身体感覚を感じながら、しばらく穏やかに呼吸をしてみましょう。「既読」の文字をきっかけに出てきた感情をそのまま受け入れます。自分に向かって「今は不安を感じているんだね」「イライラがでてきているね」「怒りも混じっているね」といった言葉がけをするのも受け入れを促してくれます。この時に「あの言い方が悪かったのかなあ(不安・自責)」「彼女(彼)は一体何をしているんだ!(怒り・嫉妬)」のような感情を煽る思考が出てきたら、その思考に絡み取られないように、穏やかに、優しい気持ちで身体感覚や呼吸に意識を戻します。思考で感情を煽らなければ、感情はだんだんと落ち着いてきて、理性が働く余裕が生まれてきます。出てきた感情、身体感覚に良い悪いのレッテルを貼らず、「今の自分はこういう状態なのだ」とフラット、かつ穏やかに向き合うのがコツです。

 

3.理性的に考えてみる

感情が落ち着いてきたら、理性の出番です。先ほどまで「私の言い方が良くなかったのかなあ」「怒っているのかなあ」「私よりも大切な人がいるの?いるに違いない!」「まさか仲間外れ?」…などなど、色々なことでモヤモヤしていましたね。これはすべて、自分の空想であり、あくまでも推測にすぎないことを理解しましょう。これら推測は、事実かどうかの確認すら取れない(もし相手に「怒っているの?」と聞いたところで100%正直に答えてくれる保証もありませんからね)、自分の「妄想」と言ってもいいでしょう。そして、携帯を手に握りしめ、「既読」の文字を眺めながら、どんなに考えても、どんなに心を砕いても、それは「答え合わせのできない推定ゲーム」をしているだけ。今ここでは何の解決にもならないことも理解します。

 

4.今ここでできることをする

ここまで理解できたら、今ここでできることをします。基本的に、

1)思い悩むのを止める(必要があれば後日直接確認する)
2)電話をしてなぜ既読のままなのか確認する

の2択になるかと思います。

 

5.相手に対してやさしい気持ちを持つ

「既読スルー」する相手の立場に立ち、やさしい気持ちを持つことも大切です。私自身、読んだメッセージに返信しようと思っても忙しくてできなかったり、うっかり忘れてしまうことがよくありますので、「あの人も忙しいのかも知れないなあ」「優しい人だし、返信がないのはそれなりの理由があるんだろうな」と、相手の対応を好意的に捉えるようにしています。上の4.の「相手に既読スルーの理由を確認する」なら、相手を問い詰めたり、自分の気持ちをぶつけるのではなく、「最近返事がないことが気になっているんだけど、体調とか大丈夫?」というように、相手の安否を気遣う心を持ってみましょう。「自分の(心の安心の)ために返信をもらうのだ」という発想ではなく、「返信がない相手は元気にしているのだろうか、幸せなのだろうか」という発想をすることで、気持ちはさらに穏やかに、安定していきます。

 

以上が、感情を知り、落ち着け、心の余裕を確保してから現実的な対応をするのがマインドフルネス的な対処法です。

アドラー心理学的対処法・存在価値と課題の分離

アドラー心理学の考え方は、そもそも「既読スルー」にモヤモヤ・ビクビクする必要はないよ、というものです。腑に落ちると、本当に「既読スルー」に思い悩まなくなります。

1.人には絶対的な存在価値がある

人には誰でも、絶対的な存在価値があります。職業、肩書き、年収、学歴や各種資格、性別などとは全く関係なく、人は生きているだけで価値があるのです。もし仮にあなたが特定の人やグループから「避けられる」「外される」という事態になったとしても、それはあなたが「その人たちのテイスト・好みに合わない(何らかの理由で合わなくなった)」というだけで、あなたの価値には全く影響はありません。人に好かれる度合いが人の価値をきめるのではないのです。

人は共同体の中で生き、共同体に貢献して幸せを感じる生き物ではありますが、属する共同体が変わることはよくありますし、私たちはつきあう人を自分で選ぶことができます。去る者は追わず、自分にとって居心地のよい人間関係・共同体を探せばよいのです。人は誰でも自分独特の眼鏡で世界を見ていますから、誰にでも馬が合わない人もいれば、気が合う人がいますよね。万人から愛される人などいません。あなたはあなたらしく、優しい心で他者と接することを忘れずにいれば、あなたを大切に思い、尊重してくれる人が必ず現れます。一部の人に嫌われることを恐れないでください。

 

2.自分の言葉をどう解釈するかは相手の課題

自分が悪意無く、できる限りの範囲で言葉を選んで発信したのであれば、そのメッセージをどう解釈するかは相手にゆだねます。悪意のない言葉から一方的に悪意を読み取るのも、文面通り解釈するのも、相手の問題です。どうしても自分の言葉が相手を傷つけたような気がするなら、相手に直接電話する、会うなどして、自分には悪意がなかったことを伝えても良いでしょうが、解釈の自由は最終的に相手にあります。自分が丁寧に、相手の立場に立った発信をしたのであれば、それで良し。必要があれば自分には決して悪意がないことを伝えて、あとの解釈は相手に任せてしまいましょう。

 

3.他者は自分の仲間・変な勘繰りは不要

アドラー心理学では「他者は自分の味方」と考えるので、「既読スルー」をそもそも悪意と捉えません。私が「あの人も忙しいんだろうなあ」「何か事情があるんだろうなあ」と考えるのは、「相手は自分に対して敵意・悪意を持っていない」と信じているからです。ですので、変な勘繰りをする必要がなく、既読のままにして返信を待っていられるのです。もしも相手が自分に敵意や悪意をもっていいて「既読スルー」しているのならば、渡りに船。これをきっかけに距離を取れたことになります。

コミュニケーション手段としてのSNS・適性を知る

マインドフルネス、アドラー心理学と関係はありませんが、SNSをコミュニケーション手段として過信するのは危険です。私個人的にはSNSは連絡事項を手短に伝えるには適していますが、複雑な内容の話し合いや議論には使うべきではないと思っています。メッセージに感情や深い想いが馳せられていても、相手の表情もしぐさも見えない、声も聴けない状態では、相手の気持ちを汲むことはとても難しく、誤解も生じやすくなります。メールよりも気軽に返信ができるが故に、反射的に感情的な言葉を使ってしまうということも起こりがちです。本当に大切なこと、自分の気持ちを伝えたい時は電話、あるいは実際に会って話をするなど、内容や状況によってコミュニケーション手段を選ぶことも大切だと思います。

私の「既読スルー体験」と対応

私は、大切な友達へのLINEメッセージをずっと既読スルーされている状態がもう一年近く続いています。日本一時帰国時には必ず会い、時間があれば旅行まで一緒に行くような仲よしでしたので、少し残念な思いはありますが、気に病んでいません。

既読スルーが始まったきっかけは、その彼女の身内に不幸があったことをLINEで知り、少しでも心の支えになれればと私の活動(マインドフルネス、アドラー心理学講師)を伝えたことでした。本当に大切な人を失うーそれは言葉には言い尽くせない悲しみを伴いますので、あえて電話はせず、何か私にできそうなことがあればいつでも連絡するよう伝えましたが、連絡以降の私のメッセージはすべて「既読スルー」になりました。もしかしたら、私が彼女の不幸を使って営業したと誤解されたかもしれないと思い、私の意図を追加連絡したものの、今日まで返信はありません。

ここで私がどれほど彼女の心中を想像してみたところで、確認することはできません。彼女は今でも深い悲しみの中にいて、返信する気になれないのかも知れませんし、返信しようにも言葉にならないくらいのたくさんの感情や思いを抱えているのかも知れませんし、私の補足説明が信じられずに、私が彼女の不幸を利用して営業活動をしたと不快に思っているのかも知れません。私の憶測のどれが正解なのかはわかりませんから、私はこれ以上の「推測ゲーム」はせず、「既読スルー」の状態をそのままにしています。年末年始の挨拶に返信がないのも、どうにもできないことですし、今現在、私ができることは何もないからです。

ただ、私は彼女のことを思い出す度に「私でない誰かが、どうか彼女の心の支えになっていますように」と祈っています。

夏休みに帰国することが決まったら、「帰国時に電話で話すか、会うことはできるか」をLINEで聞いてみるつもりですが、それも「既読スルー」になれば、またそのままにしておきます。私のことが必要になれば連絡は来るでしょうし、連絡がなければ、誰かが彼女の支えになっているということでしょうから(これも想像の域を出ませんが、少なくとも私はそう信じています)、それはそれで嬉しいことだと思っています。

ママ友のLINEグループから外されたこともありました。外された、というのは、私を除いた別のLINEグループが立ち上がり、メンバーがそちらに移動した、という形です。最初はメッセージが来なくなったことに違和感がありましたが、私がいなくなることでグループが盛り上がるのならその方がいいなと思い、特に気に留めませんでした。一部のママ友から距離を取られても、私と親しくしてくれる人は現れましたし、むしろ私を外したグループとは疎遠になって心が軽くなりました。

  

心の持ち方・考え方を少し工夫するだけで、「既読スルー」と楽にむきあえるようになります。ご参考になれば幸いです。