感謝体質の育て方・「足し算」と「引き算」

感謝の心と幸福感は比例する

感謝の気持ちがあればあるほど、人は幸福感を感じるものですよね。私自身も、嫌なことばかり続く時など、同僚や家族のちょっとした言葉や思いやりに感謝を感じることで気持ちを立て直すことができたり、ふと寂しさや切なさに心が曇る時、自然の偉大さや一杯の温かい紅茶に感謝の気持ちを覚えた瞬間、雲の切れ間から日が差してきたような、幸せな気持ちになることがあります。皆さんも似たような体験をしたことがあるのではないでしょうか。

私は、感謝の気持ちがあればあるほど、幸福感も増えていくと思っています。
感謝の気持ちと幸福感は比例します。

さて、幸せへの処方箋のひとつが感謝の気持ちだとしたら、どうしたら感謝の気持ちを増やすことができるのかが課題になりますね。今回の記事では感謝の気持ちの増やし方、「感謝体質」の育て方について書いてみようと思います。マインドフルネス、アドラー心理学どちらも使っていきます。

感謝できることを積極的に探しに行こう・「足し算」のアプローチ

人間は本能的に「足りないもの」に意識が行くように出来ています。危険なこと、良くない事、避けたいことに意識を向けることは、生存のための大切な防衛機能ですから。ただ、この「防衛機能」のなすがままになっていると、不足しているものばかりに気がつき、足りているもの、自分を満たしてくれているものを見過ごしてしまいます。ですので、善きもの、満ち足りているもの、豊かなものは、自ら意識して探していく必要があるのです。

マインドフルネスで「今ここ」に意識を向けなおし自分の周りには「足りていること」がたくさんあることに気づくことも積極的な「豊かさ探し」の方法のひとつです。買い物に行きながら、家事をしながら、仕事に向かいながら、自分の忙しさや仕事の大変さ、不足だらけの自分の健康状態など、「足りていないこと」に関して思考が堂々巡りを始めたら、意識的に「今ここ」に戻ってみましょう。

あなたが今、歩いている道端にはハッとするようなきれいな色の花が咲いていませんか?パン屋さんや焼き鳥屋さんからよい匂いが漂ってきているのでは?景色は秋色、空はどこまでも気持ちよく広がっていませんか?「感謝するネタ」は自分の身の回りに無限にあることに気づくと思います。

また、アドラー心理学には「正の注目」という考え方があります。「無いもの」「できていなこと」ではなく、「今あること」「すでにできていることに」意識を向ける考え方ですが、この「今あること」「すでにできていること」は、何か特別な、特筆に値することではありません。ごく当たり前の、一般的に「できて当たり前」「あって当然」とされることも、積極的に肯定していくのが「正の注目」です。

例えば、子供が朝起きてくること(学校に行かなくても)、自分が会社に行くこと(昨日仕事で失敗しても)、自分が生きていること(病気を抱えていても)、これら全部を「素晴らしいこと」と認めていきます。子供が学校に行かないこと、仕事での失敗、抱えている病気ではなく、それ以外の「当たり前で地味だけれど、素晴らしいこと」に敢えてスポットライトを当てるのです。意図的にスポットライトを当てれば、感謝できることはたくさん見つかるものなのです。

感謝をブロックする「傲慢」を消していこう・「引き算」のアプローチ

感謝の気持ちを増やそうとしても、心の中に感謝の気持ちをブロックするような動きがあると、感謝は当然感じにくくなります。私の経験から言って、「傲慢さ」は感謝の大きな敵だと思います。

傲慢さというのは、

自分は自分の力で生きてきた
自分は人の力など借りなくても生きていける

というような、他者とのつながりから自分を切り離し、自分だけに胸を張る心です。

感謝の心は自分と周りとのつながりの中で生まれてくるものなので、「自分のだけが」の気持ちとは愛称が悪いのです。逆に言うと、この「自分だけが」の傲慢さを心から引き算することによって、感謝の気持ちは生まれやすくなるとも言えます。

ここまで来られたのは、自分に才能があったから。
今の自分があるのは、自分の努力の結果だから。

もちろん、才能や努力があったから、今の自分があることも事実ですから、自分を認めることも大切ですね。ですが、そんな自分の才能が伸びるように支援したり、努力する自分を励ましたり、陰で支えてくれた人が必ずいたはずです。そもそも自分が今ここで生きているということは、幼少のころ、誰かが自分を世話をしてくれたからですよね。生まれてから今まで、たった一人で生きてきた人など、この世に一人もいないのです。共同体の中で、常に誰かに助けられ、支えられてきたから、あなたは、今ここにいるのです。

あなたがこうやってインターネットを使えるまでの知識を持てるようになるまで、どれだけたくさんの人の時間と愛情があなたに注がれてきたのでしょう。身の回りの世話をしてくれた親、読み書きを教えてくれた先生、一緒に学んだ友達…今のあなたは、たくさんの人に支えられて、ここにこうやって生きており、この記事を読むことができているのです。

このように、自分を他者とのつながりの中で捉えなおし、「自分だけ」の傲慢さを心から引き算するだけで、たくさんの感謝が心の中に入ってくるのがわかると思います。アドラー心理学が共同体感覚の大切さを謳うのは、人は人間関係の中に於いて幸せを感じる生き物だからかも知れません。

感謝は「コンセプト」ではなく、感じるもの

感謝体質を育てるのに、もう一つ大切なことがあります。それは、感謝を「感じる」ということ。

感謝するということは、単に「ああ、有難いな」と心の中で言語化して終わり、なのではありません。嬉しさ、有難さを身体と心いっぱいに使って「感じる」ことがとても大切です。なぜなら、感謝も幸せも「コンセプト」ではなく、「生きる」ということの一部であり、「体験されるもの」だからです。踊るような嬉しさも、深く心に染み入る有難さも、自分の身体がそれをどんな風に感じ、受け止めているのか、しっかり味わってみましょう。味わうことで、感謝はあなたの体験となり、あなたを内側から支えてくれる力になります。

感謝はどんな時もあなたの心を照らしてくれる灯のようなもの。今日ご紹介した「足し算」と「引き算」、そして「感じること」を使って、少しでも感謝の気持ちを増やしてみてください。

もしも今、あなたが感謝できるような状態ではない状態でも、感謝が心に差し込む時が必ずきます。心を閉じず、光が差し込む隙間を作っておいてくださいね。