マインドフルネスでネガティブ感情と向き合う方法・RAINメソッド

ネガティブ感情は怖くない!RAINメソッドとは

RAINメソッドとは、マインドフルネスを使い、感情と穏やかに向き合う方法で、4つのステップ(Recognize 認識する・Accept 受容する・I Investigate 検証する・N Nurture 養う/労う/寄り添う)からできています。強い怒り(カッとなって怒鳴るなど)、激しい感情が生じた時の対処法として紹介されることが多いRAINメソッドですが、私の経験ではどんなネガティブ感情にも高い効果があります。私はちょっとした落ち込み、イライラにもRAINを使っています。今回はこのRAINメソッドのステップをご紹介します。ネガティブ感情が出てきた時、是非使ってみてください。

Recognize 認識する

まず最初に、自分の中に感情がでてきたことを認識します。身体の違和感や特定の身体感覚(胸が苦しい、喉元が閉まる感じがする等)を手掛かりにするといいでしょう。普段から、自分がネガティブ感情を感じる時、身体がどんな反応をしがちなのか自分のパターンを知っていると、感情の発生にいち早く気づくことができます。

ああ、今自分は怒りを感じているな…
あ、イライラがでてきたぞ…
じわじわと悲しみが増えている…

というように、今ここで何が起きているのかを認知します。この際、「自分は怒っている(I am angry)」と考えず、「自分は怒りを感じている(I feel anger)」と捉えて、自分と感情を同化させないのがコツです。

R(認識する)で自分にかける言葉の例

今、自分の中で何が起きているんだろう?

Accept 受容する

目をそらさず、感情が「ここにある」ことを受け入れます。ネガティブ感情は一種の不快感を伴うので、逃げたくなったり目を背けたくなりますが、呼吸を意識しながら、自分に優しい言葉をかけながら、感情がそこにいるのを許していきます。胸に手を当てるなどの仕草も受け入れを促します。特に激しくない感情であれば、R(認識する)とA(受け入れる)だけで波立ちが収まり、ゆっくりと収束していくことが多いです。受容する際に大切なのは、感情に良い悪いの評価を下さず、できるだけ穏やかな優しい心でいることです。

A(受容する)で自分にかける言葉の例

何を感じてもいいんだよ
人間だもの、そう
感じることもあるよ
うん、わかるよ、xx(悲しい・腹立たしい…)だよね
大丈夫、私はここにいるよ

Investigate 検証する

感情と対話をするように、感情の後ろにある思い込みや信念、心の要求を探っていきます。この時、身体感覚にしっかりとつながり、「今ここ」にとどまります。A(受容する)と同じように、自分に対して最大の優しさを示しながら、問いかけていきます。「自分を知りたい」「この感情の訴えを聴いてあげたい」という優しい好奇心を持ち、どんな感情があっても、自分を責めることはしません。この時も、胸に手を当てていると優しい気持ちを維持しやすいです。

I(検証する)で自分にかける言葉・質問の例

(感情に向かって)何を伝えたいのかな?何をして欲しい?
(感情に向かって)一番痛むところ、一番傷つきやすいところはどこ?
(自分に)私は一体何を信じているんだろう?何にしがみついているんだろう?

色々な場面で何度も繰り返し戻ってくる感情や思考に対しては、もう少し具体的に話を聴きだす必要があります。もう少し掘り下げるため、下のような質問をしてみましょう。

何にしがみついているの?
何を固く信じているの?
それは真実?
その信念にしがみつきながら生きるって、どんな感じ?
どうしてその信念がそんなに大切なの?手放せない理由は何?
その信念を手放した人生って、どんな人生になりそう?

ノートに書きだしてみるのもいいですね。無理に答えを見つけようと頑張らなくても大丈夫です。答えが見つからなくても、自分と優しく対話するうちに、気持ちが明るくなったり、感情が静まったりします。また別の時に、優しく自分に問いかけてみて下さい。

Nurture 養う・労う・寄り添う

このNについては、指導者によってNon-Identification(同化しない、距離を取る)やNeutral(中立)とも解釈されていますが、私はRAINメソッドの第一人者の一人であるTara Brachさんの解釈を使っています。Tara Brachさんご自身、初期のころはNon-Identification(同化しない・距離を取る)と指導されていましたが、2019年の著書Radical Compassion(残念ながら和訳は出ていません)でNurtureと定義を変更しています。

R/A/Iを通して、感情が求めていることがわかったり、心の傷が見つかったりします。最後のN Nurtureでは、I Investigateの答えに沿って、自分のためにできることをしてあげます。それは、しばらく優しい言葉をかけ続けることだったり、そのまま静かに感情に寄り添うことかも知れません。あるいは自分を傷つけた人に自分の気持ちを打ち明けることかもしれません。自分に寄り添い、労う時間をたっぷりとります。

具体例・私のケース

私の場合、子供がちょっと物分かりが悪いと、すぐにイライラ、それが募ると「なんでそんなこともわからないの?!」「遅いよ!」と爆発する、その繰り返しでした。RAINを使うことで子供に向けられた自分の完璧主義に気づくことができ、子供に対するネガティブ感情はほとんどがそこから来ていることがわかりました。実際の過程はもっと複雑で長いものでしたが、簡単にまとめると下のようなステップを踏みました。

イライラ・激しい怒りに気づく

子供のもたもたや勉強の呑み込みが悪い時、私はいつも胃のあたりが重たくなりました。ひどい時は軽い吐き気も感じ、頭に血が上って熱くなりました。呼吸は浅く、速くなり、頭の中には不安をあおる思考が出やすくなります。身体からのサインや思考の癖に日ごろから敏感になることで、イライラ・怒りの発生にすぐに気づけるようになりました。

イライラと怒りを受け止める

既にイライラしているんだから、怒りがでてきているんだから、「仕方ない」。私は、はじめのうちは一種のあきらめを持ちながら感情を受け入れました。「出てきたものは消せないんだし」というあきらめのおかげで、感情と距離を取ることができたと思います。怒りが激しい時は、呼吸に意識を向け、何も言わず暫く黙っている、あるいは部屋を出るなど、受け止めることに時間を取ることもありました。実践を繰り返すうちに、感情を穏やかに眺められるようになりました。

検証する

検証はノートに上記の質問を書いたり、感情発生時に様々な自問自答を繰り返しました。なぜ、物分かりが悪いことが悪だと思うのか。「物分かりが悪いことは悪」というのは絶対的な真実なのか。真実でないとしたら、なぜ私はそれを「真実だ」としているのか。なぜ娘は、頭の回転が速くなければならず、良い成績を取らないといけないのか。良い成績を取らないといけない、これは真実か…。このような質問を使って優しく自分に問いかけ続け、最後に見えてきたのは、私の冷徹なまでの完璧主義でした。

自分を労う・自分に寄り添う

自分の完璧主義に気づいた後は、今まで完璧主義だけで自分を守ろうとしていた自分の悲しさ、弱さにも気がつきました。なぜ自分が完璧主義で自分を守ろうとしてきた理由もわかり、そんな自分が愛おしくなりました。今でも完璧主義は時々顔を出すことがありますが、その都度「完璧主義で自分を守らなくても大丈夫だ」と思えるので、完璧主義に支配されることはありません。人に対するイライラ・怒りは、出てきても「いつもの完璧主義から出てきているだけだ」と気づけるので、増幅されることなく、消えていきます。

感情を受け入れるときは、その不快感から逃げたくなります。でも、その感情をあおるような思考を止め、ただそのままにしておくと、感情は弱まっていきます。自分を責めず、その場で問題解決を急がず、感情に寄り添い、その話を聞いてみましょう。逃げなければならない感情など、一つもないことに気づくはずです。