命を支える3つのモード・バランスをとってストレスと向き合うために

私たちの命を支える3つのモード

私たちの命は、危機対応モード、行動・活動モード、休息モードの3つのモードに支えられています。この3つのモードがバランスよく機能している時、命はすくすくと育まれていくと考えられています。どのモードが良く、どれが悪い、というものはなく、お互いが支え合い、補い合って機能しています。自分が今どのモードにいるかを知り、意識的にバランスをとるように心がけると、ストレスともうまく付き合えるようになります。

今回はこの3つのモードを詳しく見ながら、ストレス対応について考えていきましょう。
まずは3つのモードの説明です。

① 危機対応モード

危機的状況になった時に稼働するモードです。アドレナリンが放出され、逃げる、立ち向かう等、反射的に自分(あるいは他者、状況)を救うための反応を起こします。現代人の場合、身体的危機だけではなく精神的危機に対しても作動しています。

② 活動・行動モード

命を維持していくために、さまざまな行動を通して自分の欲求を満たしていくモードです。食欲、性欲といった原始的な欲求を満たす行為だけでなく、自分を成長させたいという思いから学ぶ、問題解決に向けてアクションを取る、自己表現のために芸術と親しむといった精神的な活動に私たちを導くのも、このモードの機能です。

➂ 休息モード

上の危機対応モードと活動・行動モードで消費したエネルギーを補充し、回復させます。心のバランス、肉体疲労の回復が必要な時に使われ、この休息モードでは「幸せホルモン」といわれるオキシトシンが分泌されます。

理想的なストレス対応・猫に学ぶ

猫を見るとこの3つのモードをとても上手に使っていることがわかります。おなかが空けば②の活動モードに入り、集中力と適度な緊張感を使って獲物を探し、捉えます。尻尾をピンと立て、目的に向かってさっそうと歩く姿や姿勢を低くして獲物にそっと近づく姿は、まさに「活動・行動モード」ですね。

適度な緊張と収集から獲物を捕らえ、空腹が満たされたら、今度はリラックス。➂の休息モードに入ります。身体を大きく広げて横になり、毛づくろいをしたり、ただ気持ちよさそうにウトウトと昼寝をする猫を眺めているだけで、こちらもリラックスしてしまいますが、これらの行動は、必要がない時は自分を緩め、休み、次の行動へとエネルギーを備えているのです。

昼寝が終わり、またおなかが空けば活動を始めます。今度は近所の犬にほえたてられました。一瞬にして①危機対応モードが稼働し、全身の筋肉に瞬発力が戻り、あっという間にその場から逃げ出します。縄張りを争い合っているライバル猫にであえば、背中の毛を立て、威嚇・攻撃をします。危機が去れば、すぐに②の活動モードに戻って動き始めるか、➂の休息モードに戻ります。

猫を見ていると、大抵が①危機➞➂休息、②活動➞➂休息、の間を行ったり来たりするか、あるいは①危機➞②活動➞➂休息をサイクルにしていることがわかります。また、①危機モードの時間が短く、危機が去ればすぐに別のモードに切り替えていることも特徴的です。危機状態①の時間を短くし、緊張状態になる①と②の後に③を入れ、上手に自分を回復させているのですね。

一方、私たちは…

さて、我々はどうでしょうか。まず我々は①の危機モードにいる時間が長くなっています。外から襲ってくる危機的状況に加え、心の中で不安や焦りを感じ、「xxになったらどうしよう」「もうだめかも知れない」等、自分で危機を作り出しているのです。

①の危機対応モードになれば②の活動・行動モードのスイッチが入り、問題解決に意識が向かうのですが、これも頭の中で悶々と悩むと、その悩みが①の危機になってしまいます。結果的に①と②の間を行ったり来たりする時間がとても長くなります。

同時に、①危機対応➞②行動で問題解決ができたとしても、すぐに次の①が現れ、③の休息モードに入ることなく②行動モードのスイッチが入ることも多くなっています。仕事で言えば①大きなプレッシャーだったプレゼンテーションを②しっかり準備して乗り越えたと思ったら①決算期に突入し②休む間もなく毎日残業、という感じでしょうか。育児・家事でも同じパターンが見られるでしょう。

つまり、現代人の特徴は、

①危機対応モードの時間が長く
①と②どちらかにいる時間も長く
➂の時間が圧倒的に不足している

ため、とてもアンバランスな状態なのです。

自分のモードに気づき、バランスをとることが大切

この①危機➞②行動、②行動➞①危機のループから抜け出して③の休息モードに入るには、まず、「自分が今どのモードに入ってるのかに気づく」ことがとても大切です。そして、実際本当に危機的状況にあるのか、自分で危機を作り出してはいないか吟味して、具体的な対応を考え、①危機モードの時間を減らすことに努めます。最後は、もうお分かりかと思いますが、意識的に、意図的に③の休息モードに入ること。

是非、ゲーム感覚で(猫を想像しながら)、今の自分はどのモードにいるのか、時々確認してみてください。自分の入りやすいモードがわかり、どんな時にそのモードに入るのかも見えてきたら、バランスのとり方も自然にわかってきます。心身の健康のため、是非ともバランスを心がけてくださいね。