ストレスが身体に与える(悪)影響

ストレスは良くないもの?

誰でも自分のストレス体験を通して、ストレスが「自分にとってどんな感じなのか」何となくわかっていると思いますが、「ストレス」という言葉を簡単に説明することは難しいですよね。人間の進化の観点から見ると、ストレスは人類の生存のために、反射的に攻撃したり逃げたりすることを可能にしてきた、とても価値のある仕組みです。危険が目の前に迫ってきた時、身体の組織すべてが一瞬で協力体制を取り、危機を乗り越える力を発揮するのも、ストレス反応があるからです。いわゆる「火事場の馬鹿力」が出せるのも、この機能のおかげですね。

ストレスによって生じる身体反応、それ自体は害ではありません。ストレス反応後に休息時間を取ることかできれば、ストレスは「人生のスパイス」にもなるのです。例えば、大きな仕事を前にして、全力を出して一生懸命頑張る。そして自分なりに達成感を得て、その後は有休をとったり、ただ何もせずにのんびりする時間を取って、自分の頑張りを労うことができたら、「全力を出して一生懸命頑張ったこと」は、当時ストレスであったとしても、「自分を成長させてくれた、実りある時期」と解釈することができます。

猫を観察していると、このストレス対応のメカニズムをとても上手に使って生きているのがわかります。獲物を狙う時はまっすぐに獲物に集中し、継続する緊張状態をうまく使っています。近所の犬に吠え立てられたら一瞬で全力の筋肉を使い、その場から離れます。危機が去ったらストレス対応は全く必要ではなくなるので、スイッチオフ。日当たりのいいコンクリートの上で毛づくろいをして、次の緊張状態に備えて自分を休めています。

現代人のストレスの特徴

でも、原始時代から私たちを支えてきたこのストレス対応の仕組みは、現代人にとって大きな問題になっています。日々たくさんの外界からの刺激を受けることでストレス反応が起こり続け、休息するフェーズが殆ど無いからです。

家庭、職場での軋轢や面倒な友達付き合い。山積みの仕事や家事、足りない時間。現代人はストレスを引き起こす状況(=外的ストレス要因)に囲まれています。SNSも使い方によってはストレスを引き起こす外的要因になります(私はSNS疲れをしやすいタイプなので、よくわかります)。昔は狩りや収集をして食料を確保し、時々やってくる敵から逃げるか戦うかだけをしていればよかったのに、複雑な社会になったものです。

外的ストレス要因が増えたことに加え、原始人時代に私たちがやらなかったこと、上の猫がやらないことを、現代人の私たちはやっています。それは、「心の中でストレスを生み、増やす思考や感情を作って内側からストレスを加えること」です(=内的ストレス要因)。嫌いな人のことを何度も思い出しては嫌悪感を強めることや、家族の将来を根拠もなく心配すること、過去の出来事を反芻して自分を責めることなどは、この、内的ストレス要因です。

この内的ストレス要因が厄介なのです。自分でも知らないうちに作りだし、自分を苦しめていることが多いからです。そして、内的ストレス要因が引き起こす身体反応は、外的要因が引き起こすものと全く同じなのです。

ストレス時に身体で起きていること

ストレスを感じた時、私たちの体の中には下の図のような変化が起こります。右下の緑の〇のところ、コルチゾールの影響の部分、そこに「短期ストレスで免疫力がアップ・長期でダウン」とあるのがお分かりになるでしょうか。上にも書いたように、ストレスは短期なれば「人生のスパイス」になり、ストレスが悪さをするのはそれが長期的に続く時なのです。

マインドフルネスでストレスの長期化をストップ

マインドフルネスがストレス低減に効くのは、このストレスの長期化をストップできるから。下の図の左半分がストレスのループに入っているモデルで、右の緑の部分がマインドフルネスを使った「逃げ道」です。

マインドフルネスではストレスの内的要因に注目し、自分が自動的に自分を苦しめる思考や感情を繰り返し作り出していないか、チェックをかけます。チェックをかけて、内的要因を作っていることに気づいたらそれを止め、今の自分に必要なことを感じ、理解します。自分に必要なことを実行してあげることで、ストレスからストレスへと盲目的に移動しつづけるのではなく、生活の中にしっかりと休息フェーズを取り入れることができるようになります。

図でもお分かりになるように、マインドフルネスを使っていてもストレスは感じます。ただ、ストレスの感じ方・受け止め方が穏やかになり、対応も実現的で効果的なものを選ぶ余裕がでてくる、ということですね。

自分のストレス、長期化していませんか?

さて、みなさんのストレス状態はいかがですか?陽だまりの猫のように、しっかりと休む時間を取り入れていますか?まったりと何もしない時間が確保しにくい時でも、ほんの数分、目を閉じて深呼吸したり、昼休みは外をゆっくり歩いてみたりと、小さなマインドフルネスタイムを使えばストレスの連鎖から逃れることができます。ハムスターのように輪の中に入り続け、ずっと漕ぎ続ける必要はないのです。あなたがその輪から意識的に、意図的に降りればよいのです。

人生のスパイスになるストレス。上手に付き合っていきましょう。

町の片隅で猫を見かけたら、この記事のことを思い出してくださいね。