「できない」「やりたくない」から学ぶ・マインドフルネス的アプローチ

誰でも「できない」「やりたくない」と感じることがありますね。マインドフルネスの実践に関して言えば、「瞑想ができない」、「瞑想をやりたくない」と思うことも、当然あります。でも、そんな逃げの姿勢や嫌悪感からさえも、私たちは学ぶことができるのです。今日は、「できない」「やりたくない」から私が学んだことについて書きたいと思います。

宿題をしっかりやることがだけが学びではない

マインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction・通称MBSR)の8週間コースでは、かなりの宿題がでます。基本的に8週間のコース期間中は、毎日1時間程度の瞑想(ボディスキャン瞑想・マインドフルネスヨガ・静坐瞑想のいずれか)実践をお願いしています。私は今、この8週間コースを提供する立場にいますが、自分が受講生だった時、当然のことながら宿題が「できない」「やりたくない」の壁にぶつかりました。

宿題になっている、ということは、宿題をしっかりとやれば、それ相応の効果・学びがあるということです。私の場合、毎週火曜日の夜、片道45分近くかけてクラスに通う(クラス自体にかかる時間は2時間半)という、時間的な投資が大きかったこと、また、一刻も早く心の苦しみを取り除きたいという強い期待があったため、宿題にはできるだけ真面目に取り組みました。それでも、「できない」「やりたくない」という日はたくさんありました。

宿題ができなかった時、やりたくなかった時、先生にはその旨、毎週正直に伝えていました。私の希望は、いつか先生に「だったらやらなくていいですよ」と言ってもらうことだったのですが、先生は一度も「やらなくていい」とは言いませんでした。でも、それは「宿題を絶対にやりなさい」という意味ではなく、「宿題ができない」「宿題をやりたくない」という心と対話を続けなさい、そしてそこから学びなさい、ということだったのです。

「できない」「やりたくない」を観察して学んだこと

先生は「できない、やりたくないという状態を、好奇心を持って観察してごらんなさい」と言いました。言われた通り、よく観察してみたところ、「できない」「やりたくない」の中身は色々あることがわかりました。

「できない」には「時間的にできない」というもの、「上手くできない」というものがあり、「やりたくない」には「気分が乗らない」、「そもそも好きではない」等のパターンがありました。今まではざっくりと「できない、やりたくない」とひとくくりにしていましたが、その中身は実に色々だということがわかりました。

「気が乗らない」「時間的にできない」は、実はつながっていることもわかりました。私の場合、多くの場合「気が乗らない」から、宿題よりも他のことを優先させ、自然と「時間がなくなる」という結果につながっていたのです。また、その「気が乗らない」ことも、その日一日をどう過ごしたか、その日の体調に影響されることにも気づきました。しっかり睡眠がとれて、比較的ゆったりした日は、気が乗ってきて、やる気もでるのです。

言い訳にしていた「気が乗らない」「時間がない」は、どうやっても変えられないことではなく、その時々で変わり、自分でも影響を与えることができるのでした。「できない」「やりたくない」を表面的に捉えていたら、気づくことだできなかったと思います。

「やりたくない」気持ちから学んだこと

次に「やりたくない」「嫌いだ」という気持ちからは、2点学んだように思います。一つ目は、不快な感情は身体感覚として現れる、ということもう一つは、反発的な気持ちの後ろには「上手くやらなければならない」「失敗してはいけない」という自分特有の信念があったことでした。

「やりたくない」「ボディスキャンは嫌いだ」…そう考えると、胸の辺りがきゅっと絞まるような、胸が重たいような感じがすることに気がつきました。「やりたくない度」が高ければ高いほど、身体感覚をはっきり捉えることができるのも面白い発見でした。慣れてくると微細な不快感も胸やのど元の違和感としてキャッチできるようになり、この発見のおかげで、小さなストレスにも気づきやすい体質になれたと思っています。

私が一番苦手なボディスキャン瞑想ですが、嫌いな理由は、スキャン中に感じられない身体の部位がたくさんあったからでした。左足の指を感じようと思ってもどうしても感じられない。感じられないがゆえにイライラが募ってくる、なんでこんなことをやらねばならないのかわからなくなり、余計フラストレーションが溜まる…そんな感じでしたので、当然やりたくもありませんでした。クラスの時には先生に毎回のように「どうしたら左足の指を感じられるようになるのですか?私のやり方のどこがおかしいんでしょうか?」といった質問をしていましたが、先生の答えはいつも「部位を感じられない時、どんな感情が出てきますか?その感情を観察してみてください」。具体的な対処法を知りたかった私は、納得いかないものの、先生の言う通りに感情を観察してみました。

観察の結果、「瞑想誘導に従い、期待されるような結果を出さねばならない」という強い想いがあり、その後ろには「瞑想が上手くなって、心の苦しみから一刻も早く解放されたい」という強い願いと、子供のころから身に着けていた完璧主義があることに気づきました。面白いもので、こういった思い込みや信念に気づいた後、「できない」ことに対するフラストレーションは激減しました。イライラしても、「あ、これはあの期待のせいなんだ」「例の完璧主義が発動しているんだ」と思い出せば、イライラはスッと消えていくのです。自分の思い込み、信念を理解することにより、それらが何かしらの感情の波を引き起こした時にも、飲み込まれにくくなったのは、この学びのおかげです。

みなさんの「できない」「やりたくない」ことは何ですか?好奇心を持って、その時の気持ち、身体の様子、観察してみませんか?「ちゃんと課題をこなすこと」だけが学びではありません。逃げたい気持ちやあきらめの境地からも、学べることはたくさんあるのです。是非自分を理解する大切な素材として、有効活用してみてください。