アドラー心理学の「勇気」とは?

 

アドラー心理学の「勇気」とは?

アドラー心理学の「勇気」は、意を決してバンジージャンプに挑んだり、敵に猛然と挑みかかっていくヒーローが見せるような荒々しい「勇気」ではありません。これらの「勇気」は、「勇敢さ」とも言えるのですが、日本語では一般的に「勇気」と呼ばれることが多いですね。実は、英語やドイツ語では、この「勇敢さ」と「勇気」にはそれぞれ違う言葉があります。英語では「勇敢さ」はbravery、「勇気」はcourage。ドイツ語では前者がTapferkeit、後者がMut。アドラー心理学の言う「勇気」はcourage, Mutの方です。

アドラー心理学の「勇気」は、一言でいうと「人生の困難を乗り越えていく力」。

人生で降りかかってくる様々な課題から逃げず、引き受け、厳しい状況の中でも可能性を信じてチャレンジを続ける力が勇気です。かと言って、独りよがりの孤軍奮闘をしたり、人と競争して自分だけが前に進む力ではありません。勇気とは、周りの人と協力しながら、人に助けられ、人の能力を引き出し、人を助けることが出来る力でもあります。自分を信じると同時に、周りの人も信じ、協力することで人生の困難を乗り越えていくのがアドラー流の生き方です。

かつての私にとって、「人生の困難を乗り越えていくこと」は、自分に鞭を打ち、孤独に耐え、ひたすら結果を出し続けることでした。結果が出ない時は自分はダメな人間だと落ち込んだり、周りのせいにして自分に言い訳をしてきました。問題が起こる度に、自分への鞭打ちが始まるわけですから、困難や問題が怖くて仕方ありませんでした。これでは、生きるのがつらいのは当たり前ですね。

アドラー心理学の「困難の乗り越え方」は、その正反対。何度失敗しても、結果ではなく、自分が積んできた努力・過程にに注目し、自分を優しく労い、励まし、次のチャレンジへの勇気を貯めていきます。また、自分一人で立ち上がれない時は、恥ずかしがらずに周りの人に頼り、支えてもらったりします(周りの人は自分の味方ですからね)。人生の課題は次から次へと出てきますが、アドラー心理学の「勇気」を使えば、同じ課題に取り組むにも、生き生きと、希望をもって取り組めるのです。

困難に向き合った時、私は未だに当惑することはありますが、自分や状況に絶望することはなくなりました。ひとえに「勇気」のおかげだと思っています。