真の幸せへの処方箋
なぜあなたは幸せを感じられないのか
xxがある限り、私は幸せになれない
xxがないと、私は幸せになれない
そう強く思いつめていると、幸せは遠ざかるものです。
なぜなら、
XXがある限り、XXがないと…にしがみつけばしがみつくほど、意識は「XXが無くなった未来」、「XXが手に入った将来」に向いてしまい、今ここにすでにあるたくさんの豊かさや幸せが見えなくなってしまうからです。
子供の不登校終わらない限り、親としての幸せになれない。
子供がいい学校に行けなければ、幸せになれない。
この病気が治らない限り、
彼氏・彼女ができない限り、
友達グループのみんなに好かれない限り、
あの同僚と仕事をする限り、
この人と結婚している限り、
私は幸せではない。
心が「今ここにないもの」を渇望していると、人は幸せになりにくいのです。
手に入っていないものから意識を外し、「今ここ」に意識を向けることができたら
息をのむような夕焼けの赤
蝉時雨
夕方のみっちりした空気
汗をかいた後のシャワー
自分を見つめる子供の純粋な目
が見えてくるのに、心は「無いもの」ばかりを追いかけつづけ、どんどん幸せから遠くなる。幸せと、幸せになるための条件をきつく結びつけることは、不幸への処方箋ではないかと思います。
あなたがもし、今の自分が幸せでないと感じているなら、幸せに何かしらの条件を結びつけていないか検証してみてください。将来を希望し、夢を持つことが悪いのではありません。「その夢が叶わない限り、自分は幸せになれない」という思い込み・しがみつきがあなたを幸せから遠ざけるのです。
今ここにある宝物を掘り出そう
私がMBSR(マインドフルネス・ストレス低減法)講師養成講座で学んでいた時、MBSRの開発者であるジョン・カバットジン博士が実際に講座を指導している動画を見る機会がありました。博士の講座には様々な苦しみを負った方が参加していましたが、事故の後に重い身体障害を負った男性がいました。
身体を少しでもひねると激痛が走り、この障害のせいで仕事もできなければ子供と遊ぶこともできない。妻には迷惑のかけっぱなしだ。痛みを感じない時間なんてない。24時間、365日、自分は痛みの中にいる。こんな生活、もういやだ。
…それがMBSR8週間コース受講前の男性の心境でした。彼は「この痛みがある限り、幸せになんてなれない」と思っていたのです。痛みそのものが彼を苦しめていましたが、「痛みが無くならないと幸せになれない」という彼の強い想いも、彼を深く苦しめていたのです。
8週間コースの間、少しずつ「今ここ」に意識を移せるようになった男性は、コース終了後にこんな風に話していました。
24時間、365日痛みがあると思っていたけれど、そんなことはなかった。痛みが弱いときも、痛みをほとんど感じない時だってある。子供がいて、妻がいて、家族がいるって素晴らしい。今まで見えなかったことがたくさん見えてきた。
彼は痛みの中にあっても、痛みと共存しながらも、今ここにすでに与えられている幸せに気づくことができたのでした。今まではできるなんて思わなかった、子供とのボール遊びも、身体をひねることなく、足を前に突き出すことでできるようになりました。ビデオの最後に、息子さんと笑いながらボール遊びをしている男性の姿は、今でも私の心の中に焼き付いています。
痛みでいっぱいの彼の人生に幸せが戻ってきたのは、「条件づけられた将来の幸せ」ではなく、「今ここの幸せ」を見つけることができたからです。変えられないことを穏やかな心で受け入れ、自分の人生、家族の人生をより良きものにするために行動できるようになったのです。
私の人生においても、娘に沢山の期待をかけ、その期待が満たされない度に不満を感じていた頃、私には今ここにある幸せが見えていませんでした。そして、私の幸せを「娘はXXであるべき」「娘がXXでないと、私は母親として幸せになれない」と結びつけるのを止めた時、娘の笑顔ややさしい髪の香りなど、今までそこにあったのに全く意識できなかった美しさや豊かさが一気に戻ってきたのでした。
今ここの幸せがくれる力
あなたもあなたがきつく結んだ
xxがないと幸せになれない
xxがある限り幸せになれない
という幸せの条件の結び目を、少し緩めてみませんか。
たとえ病気であっても、人間関係に問題を抱えていても、人生の先行きに不安があっても、今ここで幸せを感じることはできるのです。
ですが、これは今の現状に甘んじてすべてを受け入れろ、ということではありません。
マインドフルネスで幸せを取り戻した男性のように、今ここにすでにある幸せで自分の心を癒し、力づけ、変えられないことには受け入れる勇気を、変えられることには一歩踏み出す勇気を作りだしていく、ということです。病気と共存しながらも快癒に向けて努力する勇気、自分を害する環境から抜ける勇気、家族としっかり対話する勇気を生み出してほしいのです。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、ニーバーの祈り、という祈りがあります。
The Serenity Prayer
O God, give us
serenity to accept what cannot be changed,
courage to change what should be changed,
and wisdom to distinguish the one from the other.
Reinhold Niebuhr
神よ、
変えることのできないものを受け入れる心の静寂を、
変えられるべきものを変える勇気を、
そしてその二つを見分ける智慧を、
私に与えてください
(訳:ジュバ智子)
私は二十代にキリスト教に魅かれてカトリックの洗礼を受けていますが、当時からこの祈りが大好きで、折に触れて祈っていました。同時に、神に祈らねばならないほど難しいことだとも思っていました。
ですが、変えることができないものを受け入れて心安らかに生きること、積極的に自他をいたわり、よりよい人生を作り上げることは、マインドフルに、今ここを生きることで実現できるのではないかと思うようになりました。
幸せを何かの条件と紐付けないこと。今ここの幸せに触れること。
変えられないことを落ち着いた、温かい心で受け入れ、変えられることを変えていく勇気を持ちながら生きていく。
穏やかで満たされた人生の秘訣はそこにあるような気がします。
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